冬の八ヶ岳、ひとり静かに雪の夜を越えて

八ヶ岳エリア
八ヶ岳エリア南八ヶ岳

冬の八ヶ岳を、稲子湯旅館からオーレン小屋まで歩いてきました。
前日は稲子湯旅館に泊まり、静かな温泉宿でゆっくりと体を休めてから、翌朝みどり池、しらびそ小屋、本沢温泉、夏沢峠を越えてオーレン小屋へ向かいます。
雪に覆われたみどり池、静かな森、少しずつ深くなる雪。
本沢温泉を過ぎて夏沢峠へ近づくころには、積雪も傾斜も一気に厳しくなり、冬の八ヶ岳らしい重さを感じる道になりました。
硫黄岳の山頂までは届かなかったけれど、氷点下のオーレン小屋でひとり過ごした夜や、下山中に出会った方のやさしさは、今でも心に残っています。
この記事では、稲子湯旅館からしらびそ小屋、夏沢峠、オーレン小屋へ歩いた、冬の八ヶ岳雪山登山の記録を紹介します。

この山旅について

冬の八ヶ岳は、とても静かでした。

足元の雪を踏む音。
木々の間を抜ける冷たい風。
白く閉ざされた森の奥に、山小屋の明かりや、人のやさしさがそっと残っていること。

便利なものは少なく、寒さも厳しい場所です。
けれど、その分だけ、ひとつの温かさや、ひとつの親切が、心に深くしみていきます。

この山旅は、山頂を目指すだけではなく、冬の山の中で過ごす時間そのものを感じる旅になりました。

山旅の記憶

稲子湯に到着

© OpenStreetMap contributors 稲子湯

11月23日、14時40分に稲子湯へ到着しました。

松原湖駅まで旅館の方が迎えに来てくださり、山へ入る前からほっとした気持ちになりました。慣れない土地では、こうした親切が思っている以上にありがたいものです。

稲子湯は派手さのある宿ではありませんが、長い時間を重ねてきた落ち着きがあります。山の入口にある宿らしく、これから始まる山旅へ気持ちを整えてくれるような場所でした。

森にそっとなじむ、趣のある佇まいです。
入口にともるあたたかな灯りに、迎えてもらえたような気がしました。

稲子湯旅館

お部屋はこんな感じです。
ひとりでは少し広く感じるけれど、畳とこたつにほっとします。窓の外の緑を眺めながら、もう少しだけ、のんびりしていたくなりました。

荷物を置いたあと、翌日の登山口を確認しに行きました。
地図ではただのスタート地点ですが、実際にその場所へ立つと、ここから雪の山へ入っていくのだという実感が湧いてきます。
夕方になると周囲は静かに暗くなり、山の夜が近づいてきました。街とは違う静かな時間が流れています。

これだけだとちょっと分かりませんが、天狗岳あたりでしょうか。

明日も天気になってくれるといいのですが。

夕暮れの稲子湯です。
いい感じです。

建物の中はこのような感じです。落ち着いていて安らぎます。

レトロですね。

夕食には旬の食材を使った料理が並びました。
翌日からの行動を考えると、温かい食事がとてもありがたく感じます。
温泉にも入りました。冬の山へ向かう前に体を温められるのは、旅館泊ならではの贅沢です。
明日から始まる雪山を思いながら、静かな夜を過ごしました。

温泉はこのような雰囲気です。
さすがに旅館といった感じですね。山小屋ではなかなか体験できません。

稲子湯を出発

11月24日、6時30分に稲子湯を出発しました。
出発の際に旅館の方からリンゴを頂きました。
(後のオーレン小屋でとても美味しく頂きました)
どうやら宿泊客は私一人だったようですが、松原湖駅まで車で迎えにきて頂いたり、至れり尽くせりでとても感謝しています。

7時にみどり池入口へ到着。
ここから本格的な雪道が始まります。
まだ体は十分に温まっていませんでしたが、冷たい空気の中を歩いていると自然と気持ちが引き締まっていきました。

7時20分頃には全体の3分の1ほどの地点へ。
森の中の道は大きな展望こそありませんが、雪を踏む音や木々の静けさが心地よく、少しずつ山の奥へ入っていく感覚があります。

© OpenStreetMap contributors みどり池⇔稲子湯

8時05分頃には3分の2地点へ到着。
冬の登山道は夏よりも慎重さが求められます。一歩ずつ確実に進みながら、みどり池を目指しました。

凍りついたみどり池としらびそ小屋

© OpenStreetMap contributors みどり池(しらびそ小屋)

8時30分、みどり池としらびそ小屋へ到着しました。
ここまで来ると積雪もかなり増えています。
みどり池は完全に凍り、その上に雪が積もっていました。

夏には水面を映している池も、この季節は静かに眠っているようです。冷たく張りつめた空気の中で、その景色はとても印象的でした。

しらびそ小屋を後にして、本沢温泉方面へ進みます。

本来なら天狗岳が見える場所ですが、この日は雲に隠れていました。
それでも冬の森には独特の静けさがあり、見えない山を想像しながら歩く時間も悪くありません。

本沢温泉と中山峠の分枝です。
今回は本沢温泉から夏沢峠へ向かうので左へ進みます。

右へ行くと本沢温泉、左が小海線方面です。
右に曲がります。

© OpenStreetMap contributors みどり池⇔本沢温泉

分岐を確認しながら進み、10時頃には本沢温泉付近へ到着しました。
本沢温泉を過ぎると、登山道の雰囲気が変わりました。
積雪量が一気に増え、足を運ぶたびに体力を消耗します。
歩くペースも自然と落ちていきました。

深い雪の先にある夏沢峠

夏沢峠
© OpenStreetMap contributors 夏沢峠

12時、夏沢峠へ到着しました。
ヒュッテ夏沢が見えたときは少し安心しました。
晴れていれば硫黄岳方面の景色が広がる場所ですが、この日はガスと悪天候で何も見えません。

ヒュッテ夏沢ですね。
晴れていればここからは硫黄岳の爆裂火口跡が見えるはずですが、本日はNGですね。
条件がよければ硫黄岳に挑戦したかったのですが、天候は最悪です。
通常であれば1時間ほどで山頂に到達するはずなので、残念ですが本日は断念します。
本日は一旦オーレン小屋まで行きます。

誰もいないオーレン小屋のテント場

© OpenStreetMap contributors オーレン小屋

13:00 オーレン小屋のテント場に到着しました。
誰一人居ません。

広い雪原のようなテント場に、自分ひとりだけがいる状況でした。
新雪は柔らかく、そのままではテントを張れません。足で踏み固めながら設営を進めます。
雪の上に寝る場所を作るだけでも、思った以上に時間と体力が必要でした。

16:00 外が暗くなってきましたが、テントを張っているのは自分一人のみです。
稲子湯でいただいたりんごを食べながら外を眺めます。
静かな山の夜は美しい反面、少し心細さもあります。

外気温はおよそ氷点下7度。
テントのファスナーは凍り始め、寒さの厳しさを実感しました。

そんな中でバーナーの火だけが頼もしく感じられます。
小さな炎ですが、その熱と明かりは想像以上に安心感を与えてくれました。
翌日の天候回復を願いながら眠りにつきました。

山頂よりも大切だったこと

6:00 夜が明けました。

外は相変わらずガスに包まれていました。

しばらく様子を見ましたが、天候が回復する気配はありません。
2時間ほど待ったあと、硫黄岳は断念して下山することにしました。
山頂へ立てなかったことは残念です。
それでも、また山へ来るためには無事に帰ることが何より大切だと思いました。

山で出会った人のやさしさ

下山途中、夏沢鉱泉を通過しました。
冬の山の中で建物が見えるだけでも安心します。
さらに下山を続けていると、同じくオーレン小屋方面から下ってきた方が声をかけてくださいました。
「桜平まで乗っていきますか?」
突然の申し出でしたが、その言葉がとてもありがたく感じました。

この山旅で心に残ったもの

今回の山旅では硫黄岳の山頂には届きませんでした。
けれど、凍ったみどり池や静かな雪の森、誰もいないテント場で過ごした夜は、強く記憶に残っています。

そして何より、稲子湯でいただいたりんごや、下山時に声をかけてくださった方の親切が印象的でした。

冬の山は厳しい場所です。

だからこそ、人のやさしさがより深く心に残るのかもしれません。
山頂には届かなかったけれど、それ以上に大切なものを持ち帰ることができた山旅でした。

八ヶ岳

場所

長野県諏訪郡富士見町立沢

近隣の山

  • 天狗岳1 (距離: 2.6 km, 標高: 2646 m, 標高差: -114 m)
  • 赤岳 日本百名山 山梨百名山 (距離: 3.1 km, 標高: 2899 m, 標高差: 139 m)
  • 権現岳<西岳> (距離: 6.3 km, 標高: 2398 m, 標高差: -362 m)
  • 横岳1 (距離: 1.4 km, 標高: 2830 m, 標高差: 70 m)
  • 権現岳 山梨百名山 (距離: 5.5 km, 標高: 2715 m, 標高差: -45 m)
  • 編笠山 山梨百名山 (距離: 6.7 km, 標高: 2524 m, 標高差: -236 m)
  • 峰の松目 (距離: 1.8 km, 標高: 2568 m, 標高差: -192 m)
  • 阿弥陀岳 (距離: 3.1 km, 標高: 2805 m, 標高差: 45 m)
  • 権現岳<三ッ頭> (距離: 6.3 km, 標高: 2580 m, 標高差: -180 m)

周辺の山小屋(半径5km以内)

山小屋(五十音順) 営業状況・予約 2食付き 素泊まり
赤岳鉱泉 通年営業 通年営業予約 14,000円 11,000円
赤岳山荘 通年営業 通年営業予約 9,000円 6,000円
赤岳頂上山荘 営業中 2026年7月4日 (土) 〜 10月25日 (日) 予約 13,000円 10,000円
赤岳天望荘 営業中 2026年4月25日 (土) 〜 11月8日 (日) 予約 13,000円 10,000円
硫黄岳山荘 営業中 2026年4月29日 (水) 〜 11月上旬 予約 14,000円 11,000円
オーレン小屋 営業中 2026年4月25日 (土) 〜 11月1日 (日) 予約 14,000円 10,000円
唐沢鉱泉 営業中 2026年4月25日 (土) 〜 2027年1月中旬 予約 17,750円 -
キレット小屋 休業中 休業中 - -
行者小屋 営業中 2026年5月30日 (土) 〜 10月31日 (土) 予約 14,000円 11,000円
黒百合ヒュッテ 通年営業 通年営業予約 12,000円 8,000円
しらびそ小屋 通年営業 通年営業予約 13,000円 9,500円
夏沢鉱泉 通年営業 通年営業予約 15,000円 12,000円
根石岳山荘 営業中 2026年4月下旬 〜 11月下旬 予約 16,000円 13,000円
ヒュッテ夏沢 冬季休業 現在営業していません予約 - -
本沢温泉 通年営業 通年営業予約 13,000円 10,000円
美濃戸山荘 冬季休業 現在営業していません予約 10,000円 7,500円
やまのこ村 営業中 2026年4月下旬 〜 10月下旬 予約 - -
山びこ荘 冬季休業 現在営業していません予約 - -
  • 宿泊/テント場料金は?
  • 温泉/風呂はある?
  • 注意事項は?

などの詳細な情報は以下に記載しています。

コース

稲子湯からオーレン小屋へ

1日目(2017.11.24)

稲子湯→オーレン小屋

14:40稲子湯 旅館情報
2017.11.23
宿泊
出発
6:30
稲子湯
AM6:30稲子湯から出発
7:00みどり池入口
8:30みどり池(しらびそ小屋) 小屋情報
10:20本沢温泉
12:00夏沢峠
到着
13:00
オーレン小屋 小屋情報
テント泊
Total時間:約6.5時間
歩行距離:約8.0km

2日目(2017.11.25)

オーレン小屋→桜平

出発
9:00
オーレン小屋
AM9:00オーレン小屋から下山
9:40夏沢鉱泉 小屋情報
到着
10:10
桜平
Total時間:約1.2時間
歩行距離:約3.4km

アクセス

行き

JR新宿駅から稲子湯へ

出発
約120分
新宿 時刻表
JR特急あずさ 松本行
乗換
約60分
小渕沢 時刻表
小海線 小諸行
車乗換
約10分
松原湖
稲子湯旅館の車
到着稲子湯 旅館情報

帰り

夏沢鉱泉からJR新宿駅へ

出発
約60分
桜平登山口
乗用車
鉄道乗換
約120分
茅野 時刻表
特急あずさ 新宿行
到着新宿

気象情報

天気天気気温気温
11.24晴れ(稲子湯)ガス(オーレン小屋)-2度(稲子湯)-7度(最低)(オーレン小屋)
11.25晴れ時々曇り(桜平)ガス(オーレン小屋)-1度(桜平)-8度(最低)(オーレン小屋)

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